9月27日の判決 家賃の回収を怠った大家は連帯保証人から滞納家賃を回収できなくなる。

9月27日の判決 家賃の回収を怠った大家は連帯保証人から滞納家賃を回収できなくなる。

大阪高等裁判所平成25年9月27日判決

考察

5年以上前の滞納家賃は時効で消滅しますが,大家が滞納の事実を漫然と放置して回収を怠っていた場合には,たとえ,5年以降の家賃で時効にかからないものであったとしても,未払賃料額が増大したことに関する大家の寄与は極めて大きければ,大家は滞納家賃を連帯保証人に請求できない。

事案の概要

本件は,本件建物部分について,控訴人を賃貸人,Aを賃借人とする賃貸借がなされ,Aの債務につきBが連帯保証をしていたところ,控訴人が,Aに賃料および共益費の不払があると主張して,保証債務履行請求権に基づき,Bを相続した被控訴人らに対し,未払賃料等の支払を求めている事案である。

裁判所の判断

1 Bによる連帯保証の有無について

本件契約書の連帯保証人欄にはBの名前が記載され,Bの印鑑が押捺されているところ,その印影はBの当時の実印により顕出されたものであることが認められる。

したがって,当該印影はBの意思に基づいて顕出されたものと推定され,その結果,民訴法228条4項により本件契約書が真正に成立したものと推定されるところ,被控訴人らはこれらの推定を破るに足りる事実を何ら主張立証していない。したがって,Bが本件連帯保証をしたものと認められる。

そして,本件賃貸借では賃貸期間を平成9年5月12日より起算して2年間とし,契約期間満了の日までに控訴人およびAの双方に異議がないとき,又は一方から何ら申出がないときは,同一条件で契約が更新されたものとする旨の特約が付されているところ,反対の趣旨をうかがわせる特段の事情の主張立証もないから,Bは,本件賃貸借の更新後に生じるAの債務についても保証の責めを負う趣旨で連帯保証の合意をしたものと解される(平成9年最高裁判決参照)。

2 消滅時効成立の有無について

ア 本件賃貸借の賃料等債権は月々支払われるべきものであることが明らかであるから,民法165条所定の5年の消滅時効にかかるところ,本件訴訟は平成24年6月26日に提訴されているので,同日より5年前までに支払期日が到来した賃料等債権は時効により消滅したものと認められる。

前記前提事実によれば,本件賃貸借の賃料等は毎月25日に翌月分を支払うとされているから,平成19年7月分までの賃料等債権が時効により消滅していることになる。

3 本件請求の信義則違反の有無について

Aが賃料を滞納するようになったのは平成15年7月からであり,その後遅れつつも賃料を入れることもあったが,平成16年9月頃には,Aは行方不明になり,それ以降本件建物部分はAが住んでいたときの状態で放置されてきた。

その間,控訴人代表者は,平成17年頃,Bに電話して,Aが賃料を滞納していて本件建物部分にもいないことを伝えた。Bは「自分にも連絡がない。好きにしてくれ。」と答えたが,これに対して控訴人代表者は,Bに保証人としての滞納賃料の請求もせず,また,賃貸借を終了させて本件建物部分を明け渡して貰うための協力の要請もしなかった。

また,控訴人が,未払賃料の拡大を全く防ごうとしなかった。控訴人代表者がAに同情してAに強く賃料請求をしないことは,控訴人の好意であったとしても,Aが使用してもいない本件建物部分についての本件賃貸借契約を継続させる必要は全くなかったものである。また,拡大した賃料債権を保証人に転嫁して請求するというのでは,何ら好意であるということにもならない。

保証人である被控訴人らに対する本件請求が信義則に反するか否かの判断に当たっては,まさに控訴人が未払賃料が増える事態を漫然と放置したことに最大の問題が存するのであるから,本件請求が信義則に反するとする判断を左右することはない。   

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