9月25日の判決 裏切者は許さない!

9月25日の判決 裏切者は許さない!

東京地方裁判所平成24年9月25日判決

原告が,被告に対し,秘密保持義務及び引き抜き行為禁止義務などの合意の反故を理由とする違約金を求めた事案。被告は,合意の法的な無効を主張し,違反の事実を否認したが,裁判所は,被告の原告における在任中の地位を前提として,禁止行為に違反した場合の違約金の額などを定めた本件合意は,何ら公序良俗等に違反するものではなく,被告において合意に違反する各事実が認められる以上,5000万円という違約金は被告に著しく過酷かつ不当に過大なものとは認められないとして,請求を認容した。

主文

1 被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成23年3月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事案の概要

本件は,原告が被告に対し,秘密保持義務及び引き抜き行為禁止義務などの合意の反故を理由とする違約金を求める事案である。

前提事実

原告は,コンピュータ処理による医薬及び医療産業に関する情報提供などを業とする会社である。

被告は,原告の代表取締役であった者。被告は,原告を退職した後,株式会社Aに勤務し,メディカル・コンテンツ・プロデューサーを務めている。

原告は,被告との間で,下記のとおり,合意をした。

ア 被告の原告に関する秘密情報等の保持義務(1条),原告の役員等の引き抜き行為の禁止(4条)及び誠実な業務の引き継ぎ義務(6条)

イ 被告は原告に対し,金員の不正流用・費消問題に関し,解決金として586万2932円の支払義務があることを認め,同年7月31日限り,原告の指定する口座に振り込む方法で支払う。

ウ 被告は,本件合意に違反した場合,原告に対し,違約金として5000万円を支払う。

但し,原告がこれを超える損害を被ったことを立証した場合には超過分を含めて賠償するものとする。

エ 被告は,原告を退職するにあたり,原告に対し,退職金及び退職慰労金の請求をしない。

オ その他

原告の主張

経費の不正使用

被告は,原告に在籍中,原告の経費において,業務と無関係な物品等(例えば,業務と関係ない音楽CD,ギター,音楽機器など)を購入し,私的に使用する行為を繰り返していた。

被告は,原告に在籍中,原告名義のクレジットカードの交付を受けていたところ,原告の業務に無関係な私的な支払いを継続的に行っていた。

被告が自らギターを握って音楽機器を使用することが業務上必要であったとは到底考えがたい。

タクシーチケットの不正利用

被告は,原告に在籍中,料金の請求先を原告とするタクシーチケットを大量に購入し,原告の業務と無関係な私的な目的で,常習的に使用していた。

被告が退職後,数ヶ月も経過した後にタクシーチケットの請求がくること自体,被告が在職中に不適切な相手にタクシーチケットを交付していたものと言わざるを得ない。

接待交際費についても,被告の在籍中のみ不自然に金額が急増しているが,原告の利益率は低迷しているから,接待費の増加が原告の利益に反映していない。

被告が原告を退職した後,上記経費の不正使用及びタクシーチケットの不正利用が発覚したため,原告は,被告との間で,本件合意の中で,被告が原告の第15期の事業年度中に経費の不正利用等により原告に被らせた損害相当額を被告に賠償させることで合意した。

また,被告が原告に在籍中に多数の不正行為をしていたことを踏まえて,原告は,被告に対し,原告に関する秘密情報等の保持義務(1条),原告の役員等の引き抜き行為の禁止(4条)及び誠実な業務の引き継ぎ義務(6条)などを課し,その義務に違反した場合には違約金を支払う本件合意をした。

本件合意の締結交渉は,双方の弁護士を介して行われたものであり,かつ,数ヶ月の度重なる交渉を経てようやく合意に至ったものである。

その結果,引き抜き行為等の禁止が被告の退職後に限定されたこと,接触禁止義務の範囲が1年6月(当初5年希望)かつ,被告より提出された除外者リストに掲載された者を除外したこと(当初無限定),違約金の額が5000万円となったこと(当初1億円)が挙げられる。

被告の本件合意違反行為(4条2項違反)

ア 本件合意中の第4条には,被告は,退職日現在の原告のクライアント・取引先に対し,退職後1年6か月が経過するまでの間,直接ないし間接を問わず,営業活動を含めて一切接触しないと記載されているところ(競業避止義務ではなく,競合会社に就職することは禁止していない。しかも,被告が原告に入社前からの知人については接触禁止対象者から除外している。),被告は,退職の際,例外的に接触が許されていない株式会社B代表者C及び株式会社Dと接触し,両者から多額の出資を受け,A社を設立し,Bの代表者をA社の社長として擁立するなど強固な関係を構築している。

被告は,Cとは従前からの知り合いと主張しているが,別紙本件合意の例外一覧に記載すれば足りるところ,そのような記載をしていないことを考慮すると,被告とCとは従前からの知り合いではない。

仮に,競業避止義務であるとした場合でも,被告は代表者であって,原告の重要かつ広範囲な秘密に接する期間を有していたこと,原告の業種においては競合行為が実施されて顧客や取引先が奪われることが多いために保護すべき利益があること,本件合意は双方の弁護士を通じての代理人間の交渉を経て対等な立場で作成されたこと(適用除外条項,適用期間の短縮,違約金額の減額など譲歩している。),接触禁止期間が短期であること,代償措置を講じる必要がないこと(経常利益や利益率は低迷していたし,被告は年間1680万円以上の報酬を得ていた。)などから公序良俗に違反していない。

イ 被告は,本件合意以降,宣伝資料を用いて,原告の重要な顧客である製薬会社に対して宣伝を行ったり,原告が取引している印刷会社に対し,電話による営業活動をしている。

被告が,原告の在籍中に知り合った取引先に接触すれば原告の人的関係を奪取することは容易である。

被告は,原告の取引先等に対し,挨拶状を交付したことは本件合意に違反する。

その挨拶状の内容としては,被告の私事が記載されていること,被告が主体となって原告の取引先への挨拶を目的とするものであることなどから,原告の取引先と人的関係を奪取することを企図している。

ウ 被告は,業務内容や関連資料の所在等に関する情報を一切引き継ぐことなく原告を退職したため,原告は,被告の在籍時に請け負った案件の一部について,成果物のコピーの所在を把握できなかった。

そのため,原告は,顧客から成果物である映像原版のデータのコピーを明らかにするように問い合わせを受けた際,担当者の残留物,経理帳簿及び関係会社への問い合わせなど多大な労力を費やした(6条1項違反)。

なお,被告は,原告からのコピーの所在の問い合わせの際,当該顧客に対し,コピーの所在が分からないと告げ,当該顧客から情報提供を求めるという原告の信用を失墜させる行為及び業務内容に関する情報を第三者に開示漏洩する行為をしている(4条3項違反,1条②違反)。

原告は,被告に対し,被告の在籍期間中の受注案件やその担当者など,被告が当然に把握しているべき情報が誠実に原告に引き継がれなかったことを問題にしているのであって,被告の指摘するような,被告が全ての資料を整理して原告に引き渡すことを要求しているものではない。

エ 被告は,本件合意後,原告を請求先とするタクシーチケットを不正に利用している。

そして,原告は,タクシーチケットに関する請求について,タクシーチケットに使用記録の照会,精算処理の手続,被告への弁済請求など煩雑な経理処理を強いられている(6条1項違反)。

オ 被告は,原告の取引先等に挨拶状を交付し,本件合意の接触禁止規定に違反している。

また,被告は,B及びDに接触している。

被告は,原告に対し,誠実な業務の引き継ぎをしなかった。

即ち,「どのクライアントとの間でいかなる案件を受注したか,またその担当者は誰で,協力会社はどこであるか」に関する情報が一切引き継がれていなかったものである(6条2項違反)。

(5) 原告の損害

ア 被告は,原告の代表取締役であった際,年収1680万円ないし1980万円程度の報酬を得ていたこと,在籍期間は6年4か月に上っていたこと,被告の前職は「制作局長兼バイスプレジデント」及び「執行役員」を務め,退職の際には,「企画・制作部門の責任者」として,過去に実施した顧客の製品情報及び製品戦略プランを掌握する重役を担っていた。

そして,被告は,就職したA社において,会社の中心的役割を果たしている。

イ 原告とA社との業務内容を比較しても,業務の競合は明白である。

そして,被告が原告の取引先や顧客と接触すれば,類似のプランニングを提案し,価格競争を展開することにより,取引先の奪い合いが生じることは避けられず,原告に生じる損害は甚大となる。

したがって,違反の賠償額などは不当なものではない。しかも被告は,本件合意後1か月足らずに違反行為を行っている。

被告の主張

経費の不正使用及びタクシーチケットの不正利用

被告は,実態としては,経費の不正使用を行っていない。

物品の購入についても,原告の顧問税理士に相談済みであって,経費処理したものは問題ないと回答を得ている。

また,タクシーチケットについては,被告が在籍中に交付した顧客がタクシーチケットを後日利用したに過ぎない。

被告は,退職前にタクシーチケットの束を返却しているし,原告から指摘を受けたタクシーチケットについては弁償済みである。

本件合意の事実は認めるが,被告の義務違反行為の事実及び法的効力については争う。

ア 本件合意の無効

本件合意は,被告が,原告を退職後,クライアント及び取引先と挨拶を含めて一切の接触を断つだけの合理的理由はなく,被告の行動を不当に制限するものであって,公序良俗に違反するものである。

被告は,何ら見返り無く競業避止義務を負担させられたものであり,職業選択の自由を奪い,原告を退任した後の生活を困難ならしめるものであり,かつ,市場原理による自由競争を阻害するものであるから公序良俗違反である。

しかも,被告は,本件合意に至る経緯において,原告から不当な心理的圧力をかけられたものであるのでその不当性は重い。

本件合意4条1項が原告の利益を損ねる行為一般を問題とし,同条2項が接触行為自体を禁止して競業避止義務よりも重い義務を課しているものである。

イ 本件合意の経緯

被告は,本件合意の交渉の際,3900万円を提示したが,原告の提示した1億円という途方もない金員に対し,原告の利益額の3年分程度を定めれば十分であろうとの趣旨で,当期の税引き後利益額を3倍した金額をとりあえず提示したものであって,3900万円の不正経理を認めたものではない。

しかし,原告代理人から,被告に対し,被告の不正経理による損害額は少なくとも4700万円であること,報酬が8000万円であること,競業行為による損害は1億円を下らないなどを根拠として,再度1億円を提示してきたものである。

最終的には違約金が5000万円に落ち着いたが,それは双方の金額の中間をとったに過ぎない。

違約金の趣旨については,当事者間では合意に達しておらず,被告は,不正経理の存在について,認めているわけではない。

被告は,原告から,業務上横領等で被告を告訴すると迫られ,被告代理人からも警察が刑事告訴を受理する可能性はゼロではないという回答のもとで本件合意をしたものであって,その有効性については慎重な吟味が必要であり,実害との均衡についての調査も不可欠である。

そして,実害について,被告は,現在の被告の顧客が原告の在籍時とは異なる顧客であって,原告の売上げ減少にはつながらない。

ウ 本件合意違反の有無

Aは被告が設立したものではない。

被告は,Cから誘われて入社した社員に過ぎない。

被告とCは,従前からの友人であって,Cが従事していたWEB事業の頭打ちと関連して広告代理業を起業することを希望し,他方,被告が8月以降職を失っていたことから,被告は,Cが設立したAの社員として入社したに過ぎない。

挨拶状も被告が広告業界においてCよりも知られていたために名前を出したに過ぎない。

被告は,原告の日常業務の全てを把握しているわけではないので,その引き継ぎの対象及び範囲については,被告が把握しているものに限定される。

原告の指摘するコピーの紛失については,被告が全面的に責任を負うべきいわれはなく,被告が故意に隠匿したり,不注意により紛失したものではないので,責任を負わない。

被告は,原告のEから責任があるかのような追及をされたため,その顧客に問い合わせたに過ぎない。

原告の損害の程度

仮に,被告の一連の行為が本件合意に違反したとしても,原告には実質的な損害がなく,5000万円という違約金は被告に著しく過酷かつ不当に過大なものとして減額されうる。

原告は,製薬メーカーの会議の記録集の制作が主な業務であるが,被告は,新薬の純粋なプロモーション施策を遂行するものであるので,競業となる会議運営や記録集の制作は請け負っていない。

したがって,原告には実質的な損害はなく,原告の暴利となるので,本件合意は無効である。

裁判所の判断

(1) 本件合意の有効性の有無

ア 被告は,原告に在籍中,原告の経費において,業務と無関係な音楽CD,ギター及び音楽機器などを購入し,私的に使用する行為を繰り返していた。

この点,被告は,物品の購入についても,原告の顧問税理士に相談済みであって,経費処理したものは問題ないと回答を得ていると主張するが,経理上問題があるか否かと原告との関係で業務上関係があったかどうかとは別問題であって,業務と無関係な音楽CD,ギター及び音楽機器などの購入は背任行為に該当する。

イ 被告は,原告に在籍中,料金の請求先を原告とするタクシーチケットを大量に購入し,原告の業務と関連しない私的な目的で,常習的に使用していた。

被告が退職後,数ヶ月も経過した後にタクシーチケットの請求がくること自体被告が在職中に不適切な相手にタクシーチケットを交付していたものと言わざるを得ない。

被告は,タクシーチケットについて,被告が在籍中に交付した顧客がタクシーチケットを後日利用したに過ぎないと主張するが,被告が原告に在任中に顧客に交付したタクシーチケットが直ちに使用されず,本件合意がなされた平成22年7月30日より2か月以上経過した同年10月以降に使用されていることは被告の主張を前提とすると不自然である。

したがって,被告の上記主張は採用できない。

ウ 被告の上記経費の不正使用及びタクシーチケットの不正利用を踏まえて,本件合意がなされた(解決金586万2932円)。

本件合意の締結交渉は,双方の弁護士を介して行われ,かつ,数ヶ月の度重なる交渉を経てようやく合意に至った。

その結果,引き抜き行為等の禁止が被告の退職後に限定されたこと,接触禁止義務の範囲が1年6月(当初5年希望)かつ,被告より提出された除外者リストに掲載された者を除外したこと(当初無限定),違約金の額が5000万円となった(当初1億円)。

この点,被告は,違約金の3900万円の提示は,3900万円の不正経理を認めたものではないし,最終的には違約金が5000万円に落ち着いたが,それは双方の金額の中間をとったに過ぎないこと,被告は,原告から,業務上横領等で告訴することを迫られ,被告代理人からも警察が刑事告訴を受理する可能性はゼロではないという回答のもとで本件合意をしたことなどを挙げて,その有効性に疑問を呈している。

しかし,被告は,金員の不正利用・費消問題に関し,解決金として586万2932円を支払っていること,双方弁護士を介して本件合意に至っていることなどを踏まえると,被告が犯した犯罪を前提として本件合意に至ったものと解することができる。

したがって,本件合意の締結の際,原告から,被告に対し,業務上横領等で被告を告訴すると迫られたり,本件合意を担当した被告の代理人から上記告訴を警察が受理する可能性がゼロではないとの指摘を受けたからと言って,何ら本件合意の有効性を左右するものではない。

エ 被告は,原告の代表取締役であった際,年収1680万円ないし19800万円程度の報酬を得ていたこと,在籍期間は6年4か月余りに上っていたこと,被告の前職は「制作局長兼バイスプレジデント」及び「執行役員」を務め,退職の際には,「企画・制作部門の責任者」として,過去に実施した顧客の製品情報及び製品戦略プランを掌握する重役を担っていた。

そして,被告は,就職したAにおいて,会社の中心的役割を果たしている。

オ 以上のとおり,被告の原告における在任中の地位を前提として,本件合意の原因となった被告の背任行為,本件合意の交渉の経緯,被告の禁止行為の内容及び被告が禁止行為に違反した場合の違約金の額などを定めた本件合意は何ら公序良俗等に違反するものではないので,有効である。

したがって,被告の上記主張は採用できない。

(2) 本件合意の違反行為の有無

ア 本件合意中の第4条には,被告は,退職日現在の原告のクライアント・取引先に対し,退職後1年6か月が経過するまでの間,直接ないし間接を問わず,営業活動を含めて一切接触しないと記載されているところ,被告は,退職の際,例外的に接触が許されていないB及びDと接触し,両者から多額の出資を受け,Aを設立し,Bの代表者をAの社長として擁立するなど強固な関係を構築している。

被告は,Cとは従前からの知り合いと主張しているが,別紙本件合意の例外一覧に記載すれば足りるところ,そのような記載をしていないことを考慮すると,被告とCとは従前からの知り合いとは認められない。

また,被告は,本件合意以降,宣伝資料を用いて,原告の重要な顧客である製薬会社に対して宣伝を行ったり,原告が取引している印刷会社に対し,電話による営業活動をしている。

この点,被告は,Aは被告が設立したものではなく,被告は,C(C)から誘われて入社した社員に過ぎないこと,挨拶状も被告が広告業界においてCよりも知られていたために名前を出したに過ぎないなどと主張している。

しかし,上記挨拶状の内容等に照らすと,被告が実質的にAを設立したような体裁となっていることを考慮すると,本件合意の4条2項違反の事実が認められる。

イ 被告は,業務内容や関連資料の所在等に関する情報を一切引き継ぐことなく原告を退職したため,原告は,被告の在籍時に請け負った案件の一部について,成果物のコピーの所在を把握できなかった。

そのため,原告は,顧客から成果物証拠である映像原版のデータのコピーを明らかにするように問い合わせを受けた際,経理帳簿及び関係会社への問い合わせなど多大な労力を費やした(6条1項違反)。

なお,被告は,原告からのコピーの所在の問い合わせの際,当該顧客に対し,コピーの所在が分からない事実を告げて,当該顧客から情報提供を求めるという原告の信用を失墜させる行為及び業務内容に関する情報を第三者に開示漏洩する行為をした(4条3項違反,1条②違反)。

この点,被告は,原告の日常業務の全てを把握しているわけではないので,その引き継ぎの対象及び範囲については,被告が把握しているものに限定されること,原告の指摘するコピーの紛失については,被告が全面的に責任を負うべき言われはなく,被告が故意に隠匿したり,不注意により紛失したものではないので,責任を負わないこと,被告は,原告のEから責任があるかのような追及をされたため,その顧客に問い合わせたに過ぎないことなどを主張している。

しかし,原告が,被告に対し,在籍期間中に受注案件やその担当者など被告が当然に把握しているべき情報が誠実に引き継がれなかったことが問題であって,被告の指摘するような義務は前提となっていないこと,被告の顧客への問い合わせ自体に原告の信用失墜及び第三者への開示漏洩が認められるので,被告の上記主張は採用できない。

ウ 被告は,本件合意後,原告を請求先とするタクシーチケットを不正に利用しているところ,原告は,タクシーチケットに関する請求について,タクシーチケットに使用記録の照会,精算処理の手続及び被告への弁済請求などの経理処理を強いられている(6条1項違反)。

エ 以上のとおり,本件合意に違反する上記各事実が認められる。とすると,原告とAとの業務内容を比較すると,業務の競合は明白であるため,被告が原告の取引先や顧客と接触すれば,類似のプランニングを提案し,価格競争を展開することにより,取引先の奪い合いが生じることは避けられず,原告に生じる損害は甚大となる危険があること等の事情を考慮すると,被告の指摘するような原告には実質的な損害がなく,5000万円という違約金は被告に著しく過酷かつ不当に過大なものとは認められない。

第4 結論

よって,原告の請求は理由がある。