最高裁判所第3小法廷平成25年9月17日判決 道路交通法違反被告事件に係る略式命令に対する非常上告事件
非常上告とは、刑事訴訟における確定判決について、その事件の審判が法令に違反したことを理由として、検事総長が、最高裁判所に対して、その違法の是正を求める申立て(刑事訴訟法454条)。
終わった事件であっても間違いがないかチェックしている検察庁。秋霜烈日。日の当たらないところでもキッチリ仕事しています。それなら初めから間違えるなと言いたいところですが,人には誰しも間違いがあります。「過ちては改むるに憚ることなかれ。」
反則行為に当たる速度違反を非反則行為と誤認してされた略式命令に対する非常上告
裁判所の判断
倉敷簡易裁判所は,平成21年6月16日,「被告人は,平成21年4月6日午前9時27分頃,徳島市川内町内の道路において,指定最高速度(50km毎時)を31km毎時超える81km毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行した。」旨の事実を認定した上,道路交通法22条1項,4条1項,118条1項1号,同法施行令1条の2,刑法18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金6万円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,同年7月2日確定した。
しかしながら,一件記録によると,本件違反場所は,最高速度について何らの指定もされておらず,道路交通法22条1項,同法施行令11条に規定する法定最高速度(60km毎時)が適用される道路であったから,被告人の速度超過は正しくは21km毎時となり,同法125条1項により反則行為となると認められる。
したがって,被告人に対しては,同法130条により,同法127条の通告をし,同法128条の納付期間が経過した後でなければ公訴を提起することができない。
しかるに,倉敷区検察庁検察官事務取扱検察事務官が上記の反則行為に関する処理手続を経由しないまま公訴を提起したのであるから,倉敷簡易裁判所としては,刑訴法463条1項,338条4号により公訴棄却の判決をすべきであったにもかかわらず,公訴事実どおり前記事実につき有罪を認定して略式命令を発付したものであって,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であることが明らかである。
よって,本件非常上告は理由があるから,刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,同法338条4号により本件公訴を棄却することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。