東京地方裁判所平成23年9月7日判決
考察
有名ブランドの名称を使用した店はたくさんありますが,不正競争防止法に引っかかります。バレなければいい,バレても金払えばいいだろうということをやっていると,そのうち痛い目にあいます。
被告がその営業する営業施設において使用する「シャネル」,「CHANEL」等の営業表示は,原告の周知かつ著名な営業表示と同一又は類似し,その有する高級なイメージを希釈し,原告の営業上の利益及び信用を害したものと認め,原告の被告に対する損害賠償を認容した事例
前提となる事実
原告は,ココ・シャネルが設立したフランス法人レ パルファム シャネルのシャネル社。
被告は,
「シャネル」,
「CHANEL」,
「シャネル倶楽部」,
「CHANEL倶楽部」及び
「シャネルクラブ」
の看板を掲げた性風俗店。
原告の営業表示及びその周知性,著名性
シャネル社は,日本において,「シャネル」及び「CHANEL」の表示を営業表示として使用している。
シャネル営業表示は,遅くとも昭和30年代の初め頃には,日本においてシャネル社の営業であることを示す表示として周知となっており,また,遅くとも被告が被告営業表示を使用して営業を開始した昭和59年には,日本においてシャネル社の営業であることを示す表示として著名となっていた。
被告の行為
被告は,昭和59年2月24日から被告営業施設において被告営業表示を使用して営業を開始し,原告が被告営業表示について警告をした後も被告営業表示を使用している。
シャネル営業表示と被告営業表示の類似性
被告営業表示のうち,「シャネル」及び「CHANEL」については,原告を含むシャネル社の周知かつ著名な営業表示であるシャネル営業表示と完全に一致している。
また,被告営業表示のうち,「シャネル倶楽部」,「CHANEL倶楽部」及び「シャネルクラブ」については,被告営業表示から,政治・社交・文芸・スポーツ・娯楽などで共通の目的を持つ人々によって組織された団体を示す一般名称「倶楽部」,「クラブ」を除いた部分,すなわち「シャネル」,「CHANEL」が,原告を含むシャネル社の周知かつ著名な営業表示であるシャネル営業表示と同一であり,被告営業表示はシャネル営業表示に全体として類似する。
被告の過失
被告には,被告の営業表示として原告を含むシャネル社の周知かつ著名なシャネル営業表示と類似する被告営業表示を使用したことにつき,少なくとも過失がある。
争点は損害額
裁判所の判断
被告は,昭和59年2月24日から,被告営業施設において被告営業表示を使用して性風俗店を営業しており,また,シャネル営業表示は,遅くとも被告が被告営業表示の使用を開始した昭和59年の時点で,日本においてシャネル社の営業であることを示す表示として著名なものとなっており,被告営業表示はシャネル営業表示に類似するものであるから,被告がその営業を示す表示として被告営業表示を使用する行為は,不正競争防止法2条1項2号所定の不正競争に該当する。
なお,被告は,被告営業表示を自己の営業施設の営業表示として使用する行為は,一般消費者に,原告を含むシャネル社と被告との間に緊密な営業上の関係又は同一のグループに属する関係が存在すると誤信させるものである旨の原告の主張を争うが,これは不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争の該当性に関するものであり,被告の行為が同項2号所定の不正競争に該当することを左右するものではない。
そして,被告がその営業を示す表示として被告営業表示を使用する行為は,シャネル営業表示の有する高級なイメージを希釈し,シャネル社の知的財産権を管理する原告の営業上の利益を侵害し,その信用を害したものと認められる。
原告の被った損害の額は,原告の事業内容,シャネル営業表示の有するイメージ,被告が経営する事業の業種,内容及び被告営業表示の使用期間等に鑑みると,300万円と認めるのが相当である。
また,原告は弁護士を選任して本件訴訟を遂行しているところ,本件事案の性質,上記認容額その他諸般の事情を考慮すると,その弁護士費用のうち50万円を被告の上記不正競争と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。