東京高等裁判所平成25年9月6日判決
考察
いちど公になった記事であったとしても,これを再度転載すれば名誉毀損です。
事案の概要
既に公開されているインターネット上の掲示板に掲載された記事又は出版された書籍の内容をインターネット上の掲示板に転載された匿名の書き込みによって自己の権利が侵害されたとして,プロバイダ責任法4条1項に基づき,そのインターネット接続サービスの契約者の氏名又は名称,住所及び電子メールアドレス等の開示を求める事案。
原審は,これらの記事の掲載又は書籍の出版以上に原告の社会的評価を低下させるものであるということはできないとして,原告の請求を棄却。これに不服として控訴。
裁判所の判断
まず,本件情報のうち,本件情報8は,控訴人がかつて□□□□□□□□□□□□□□□□であったものであり,その後,「□□□□□□□□□□□□□□」と称されるようになり,□□□□□□□□から逃れて□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□であるなどと述べるものであり,これらは控訴人の社会的評価を低下させるに足りる具体的な事実を摘示するものと認められる。
次に,本件情報9は,Aと控訴人の□□□□□□□□について記述するものであり,控訴人の最重要顧客であるBが控訴人の□□□□に出資して大損したため,Bの代役であるAが□□□□□□□□□□□□□□□□に就任し,上記損失に対する補填を受けるため,高額の役員報酬を受けているものであって,控訴人がBないしAに対し違法な損失補填をしているなどと述べるものであり,これも控訴人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実を摘示するものと認められる。
また,本件情報18は,本件情報8の一部と同様に,控訴人が「□□□□□□□□□□□□□□」と称されているなどと述べるものであり,これも控訴人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実を摘示するものと認められる。
本件情報8,9,18は,先にインターネット上の××××に掲載されていた記事を転載したものであるか,又は□□□□□□□□□□□□に掲載されていたものであることが認められる。
しかし,本件情報8,9,18をウェブサイト「△△△△」で見た者の多くがこれと前後して××××の転載元の記事や□□□□□□□□□□□□の記事を読んだとは考えられず,ウェブサイト「△△△△」に本件情報8,9,18を投稿した行為は,新たに,より広範に情報を社会に広め,控訴人の社会的評価をより低下させたものと認められる。
本件情報8,9,18は,真実ではないものと認められ(甲6),かつ,ウェブサイトに具体的な根拠も示さずに匿名で控訴人の社会的評価を低下させる内容の断片的な事実を一方的に掲載するというその行為態様からして,公益を図る目的がないことも明らかと認められる。
以上によれば,本件情報8,9,18が掲載されたことにより,控訴人の名誉権が明らかに侵害されたものと認められる。
よって,本件請求は,本件情報8,9,18について発信者情報の開示を求める限度で理由がある。
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