東京地方裁判所平成18年9月15日判決
婚姻関係を破綻させたなどとして,不貞行為に慰謝料200万円の支払を命じた事例
事案の概要
夫が彼女を妻がいないときに家に連れ込んでベッドで寝ていたところを妻に見つかってしまった事案
主 文
1 被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成17年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
事案の概要
1 原告の主張
(1)原告は,Aと平成10年4月6日に婚姻届出し,翌年Aとの間に長女Aをもうけた。
(2)被告は,遅くとも平成16年9月ころより,Aが婚姻していることを知りながら,Aと関係を持っている。
(3)原告は,被告とAとの不貞行為を知り,著しい精神的ショックを受けて,うつ状態となり,現在,治療を継続中である。
原告の被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,1000万円が相当である。
(4)よって,原告は,被告に対し,1000万円の支払いを求める。
2 被告の主張
被告とAとの間には,遅くとも平成15年末以降は,ほとんど夫婦らしい交流はなく,平成16年9月以前に原告とAとの間の夫婦関係は破綻していた。
裁判所の判断
1 原告とAが婚姻届出をした夫婦であり,その間に長女Aがあること,被告がAが婚姻していることを知りながらAと関係を持っていることは,当事者間に争いがない。
2 そこで,被告の主張についてみるに,証人Aは,平成15年ころから原告と離婚を考えていた旨供述するが,その原因として述べることに具体的なものはなく,到底信用できない。
同証人は,原告は細かいことを非常に気にする性格であるとか,金銭感覚が異なるとか抽象的に述べるが,婚姻関係が破綻したことを窺わせるような客観的事情は見当たらない。
また,セックスレスであったとも述べるが,被告がAのアパートのベッドで寝ているところを原告が発見した平成16年12月の後も,Aが東京に転勤となった平成17年9月までの間,Aと原告夫婦の仲が一応平穏に推移していたことは明らかであって,しかも,それまで原告に離婚を求めたこともないのに,被告と関係をもった平成16年9月の直後である同年10月には,原告に離婚の申し入れをしたというのであるから,離婚の申し入れは,被告と関係を持ったことによるものであるとみるのが自然かつ合理的であるといわなければならない。
したがって,平成16年9月以前に原告とAとの婚姻が破綻していたと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。
3 原告がAと被告の不貞行為によりうつ状態となったことは認められる。
これに,原告とAとの婚姻期間,子があること,被告は原告に謝罪することもないこと,その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,本件の慰謝料としては,200万円が相当である。
考察
一般的に世間相場と言われている金額。
婚姻期間6年。子供あり。謝罪の言葉もなく,妻はうつ状態になってしまったという要素を勘案して出た金額です。