最高裁判所第2小法廷平成25年9月13日判決
考察
親の借金の保証人となった子供は親が借金を完済しないで亡くなった場合は親の財産を相続するので債務者の地位と保証人の地位を併有するので保証債務の支払いをすると主債務の消滅時効の主張が出来なくなる。
事案の概要
Aは銀行。
Bは借主。
上告人は保証会社。
被上告人は上告人との関係で連帯保証人。
Bが焦げ付き、保証会社が代物弁済。
B死亡。
被上告人が単独でBを相続。
被上告人は,上告人に対し,被上告人が単独でBを相続する旨を告げた。
被上告人は,上告人に対し,連帯保証契約に基づく債務の履行として一部を支払った。
問題の所在
上告人は被上告人に対し,連帯保証債務の履行請求権に基づき,求償金残元金の支払を求めて提訴した。
これに対し,
被上告人は,主債務について上告人が代位弁済をした日から5年が経過したので連帯保証人として求償金債務の時効消滅を援用。
また,連帯保証債務についても,弁済以降
連帯保証人としての弁済もしていないので時効消滅を援用した。
最高裁の判断
原審は,被上告人による本件各連帯保証債務の弁済は,主債務の消滅時効を中断するものではないとして求償金債務の時効消滅を認めた(親亀こけたら子亀もこけた)。
しかしながら,原審の判断は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。
(1) 主債務を相続した保証人は,保証人としての地位に併せて,包括的に承継した主債務者としての地位をも兼ねるから,相続した主債務について債務者としてその承認をし得る立場にある。
そして,保証債務の附従性に照らすと,保証債務の弁済は,通常,主たる債務が消滅せずに存在していることを当然の前提とするものである。
しかも,債務の弁済が,債務の承認を表示するものにほかならないことからすれば,主債務者兼保証人の地位にある者が主債務を相続したことを知りながらした弁済は,これが保証債務の弁済であっても,債権者に対し,併せて負担している主債務の承認を表示することを包含するものといえる。
これは,主債務者兼保証人の地位にある個人が,主債務者としての地位と保証人としての地位により異なる行動をすることは,想定し難いからである。
したがって,保証人が主債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合,当該弁済は,特段の事情のない限り,主債務者による承認として当該主債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると,被上告人は,単独でBの本件各求償金債務を相続したことを知りながら,連帯保証債務の弁済を継続したものということができ,この弁済が求償金債務の承認としての効力を有しないと解すべき特段の事情はうかがわれない。
そうすると,上記弁済は,主債務者による承認として求償金債務の消滅時効を中断する効力を有するというべきであり,上記の中断は,被上告人が連帯保証人として援用する求償金債務及び連帯保証債務の消滅時効に対しても,その効力を生ずるといえる(民法457条1項)。
したがって,上告人が本件各連帯保証債務の履行を求める裁判は申し立ての時点では,いずれの債務の消滅時効もまだ完成していなかったことになる。
以上によれば,上告人の再抗弁を排斥した原審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。