8月9日の判決 遺言書が数枚にわたる場合であっても,その一枚に日付・署名・押印がされていれば遺言書として有効とされた事例
京都地方裁判所平成16年8月9日判決
事案の概要
自筆で遺言書を作成する場合,一枚の用紙に収まらず,数枚に及ぶ場合もあり得ますが,そのとき,日付,署名押印は一枚一枚に書かなければならないか,それとも,一枚の紙に日付,署名押印がなされていれば足りるとするかという点が本件では争われました。
裁判所の判断
遺言書が数枚にわたる場合,一通の遺言書として作成されているときは,日付,遺言者の署名押印はそのうちの一枚になされていれば足り,必ずしも一枚毎になされる必要はない。
考察
自筆証書遺言の場合,遺言者が自ら日付を自署し,署名押印しなければならないとされています。この遺言書が数枚にわたる場合に,署名押印については,複数枚で一通の遺言書であるならば,一枚に署名押印されていれば問題ないとするのはこの判決です。
判決の中には,さらに進んで,遺言書に署名が無くとも,遺言書を入れた封筒に自署があれば良いとするものや,押印の場所も,遺言書自体に押印が無くとも,遺言書を入れて封をした封筒の裏面の封じ目と遺言者の書名の下に押印があれば足りるとされています。
書簡形式の遺言証では,封筒の裏面のとじ目の左右に2個の押印があれば足りるとする判決もあります。
このように,自筆証書遺言書の日付,署名押印は必ずしも厳格には様式が定められておりませんが,だからといって,無用な争いを招く必要はございませんので,複数枚に及ぶときには,一枚の用紙に日付,署名押印をしなければならないとしても,ホチキスで複数枚を一つに綴じ,割り印をしておくのが良いと思います。