物に対する損害

1 修理費

  物損の場合,修理費については適正修理費相当額が認められます。

  適正修理費相当額といっても,漠然としてどこまで認められるか分からないかも知れませんが,裁判例では,金メッキを施したバンパー(メルセデス・ベンツ)が損傷した事案で,バンパーの取替費用は損害だが,バンパーに金メッキを施すことは無用に損害を拡大させる物であるとして過失相殺され,金メッキ修理代金が減額されたというケースがありました(東京高裁平成2年8月27日判決)。

  また,修理されておらず,今後も修理する可能性がない場合であっても,現実に損傷を受けている以上,
修理費相当額は損害として認められます。

2  全損の判断

  修理するよりも同種同等の車両を購入した方が安上がり場合には,全損として買換差額が認められ,反対
に購入するよりも修理した方が安上がりな場合には修理費が認められます。

  裁判例では,車両時価が31万6000円,修理費が202万9790円,同種同等の車両の調達価格(買換諸費用含む。)が,300万円の場合,調達価格が修理費を下回ることはないとして修理費202万9790円が認められたケースがあります(横浜地裁平成元年6月26日判決)。

  なお,車両に愛着があったとしても,この愛着分を修理費に含めて損害と認めることはできません(東京高裁平成4年7月20日判決)。

3 買換差額

  全損等により,その買換をすることが社会通念上相当と認められる場合,事故時の時価相当額と売却代金の差額が認められます。

  ただ,社会通念上,買換が相当といえるか どうかについては,引渡20分後に追突された新車のベンツについて,既に一般車両と同様に公道において通 常の運転利用に供されていた以上,引渡直後だったことは新車の買換を認めるべき特段の事情とまではいえないとして,修理費しか認められなかったケースがあります(東京地裁平成11年)9月13日判決)。

4 手続登録関係費

  買換のために必要となった登録・車庫証明・廃車の法定手数料相当分,ディーラー報酬部分(登録手数料,車庫証明手数料,納車手数料,廃車手数料)のうちの相当額,自動車取得税については損害として認め
られます。

5 評価損

  修理しても外観や機能に欠陥が生じていたり,事故歴のため商品価値の下落が見込まれる場合には評価
損も認められます。

6 代車使用料

  代車を利用した場合には代車使用料が認められます。

  但し,いつまでも認められるわけではなく,修理や買換に必要な相当期間に限られます。

  通常1週間か2週間程度ではないでしょうか?

  また,代車のグレードについて,高級外国車が損害を受けた場合の代車として,同種類の高級外国車を代車として代車使用料が認められるか裁判例で問題となるケースがありますが,ほとんどの場合,高級国産車で十分代替できるとして,高級国産車の代車使用料相当額しか認められません。